世界40カ国を巡り、珈琲の真髄を追い求めてきた焙煎士・榎原圭太氏。その旅の集大成として誕生したのが、福岡市中央区のこの自家焙煎専門店だ。中米の鮮やかな街並みを思わせる外観は、彼の冒険と情熱を象徴するように、街角に彩りを添えている。
店内に一歩足を踏み入れると、芳醇な焙煎の香りが訪れる人を出迎える。1階に設置された焙煎機では、生豆が魔法のように変化していく様子を間近で見ることができる。その透明性は、榎原氏の珈琲への真摯な姿勢を物語っている。
常時8種類取り揃えられる珈琲豆は、それぞれが榎原氏の旅の記憶を宿している。コスタリカ・ロスロブレスの華やかな酸味は雨季の農園の香りを、エチオピア・チェルベサの深い味わいは、アフリカの大地の力強さを感じさせる。
メニューには、シンプルな本日の珈琲から、創意工夫を凝らしたエスプレッソバナナシェイクまで、世界の珈琲文化とバリスタの技が見事に調和している。自家製スイーツも、各地で出会った味わいをヒントに生まれた逸品だ。
約18坪という小さな空間には、世界の珈琲文化が凝縮されている。1階2席、2階6席という限られた席数は、むしろバリスタと客との距離を近づけ、より深い珈琲体験を可能にしている。
榎原氏が追い求める「究極の一杯」は、まだ見つからないという。それは、完璧な一杯を求める終わりなき旅の途中であることの証かもしれない。しかし、その探求の過程で生まれる珈琲たちは、既に多くの人々の心を掴んで離さない。
この小さな焙煎所は、旅する焙煎士の情熱と技術が結実した場所であり、新たな珈琲文化の発信地となっている。訪れる人々は、一杯の珈琲を通じて、世界40カ国の珈琲文化への小さな旅に出かけることができるのだ。
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